組戻しリターンズ

見も知らずの人に
間違えて振り込んでしまったお金。
56,000円。
誰にこの話をしても

「戻るわけないでしょ!」
「バ
「そんな人がこの世にいるんですね」
「俺にも一万でいいから振り込んでよ」
「いいこずかいになっちゃったね」
などなど言われるたびにまた落ち込み。
慰められればそれはそれで
また落ち込む
どうにもならない自分はほんと情けない。

家族への目線も合わせずらくなり、
家での話し相手は
ネコとマクラだけになってしまった私。
もう当然のようにお金はあきらめ、
時とともにあのチンコがサワ〜ってくる感覚も
薄れていくこの頃でした。

そしてそんな中、
振り込んで一ヶ月くらいして、
銀行のオネエさんより携帯に報告が入ります。
話ではこの間に銀行側から振り込み先の名義人に、
3度の電話と2度の書類郵送をしてくれたらしい。
しかし・・・
連絡は取れなかったとのこと・・・
私のかすかな希望は
恥ずかしさと自分への甘さを知るだけでした。

“組戻しも期間が決まっているらしく、
オネエさんは
「再度“組戻しの手続きをなさいますか?」
と聞くので、
私は100メートル上のワラをも見上げる思いで
「ぜひおねがいします〜」と
幽霊みたいな弱々しさで伝えます。
(お金が戻らなければ“組戻し”の手数料864円は返金されるのこと)

それからです。10日もたった頃でしょうか、
またオネエさんから連絡があり
「サカイ様と連絡が取れ、組戻しの了解を得ました」
えっ!! お金戻るってこと?
その言葉に私は宙を浮き、
頭の中ではスローモーションで咲いていく花々を
確かに見ていました。

そしてオネエさんは
花の中でヘラヘラ笑いだした私に、
「まだ確定ではなく、時間もかかると思いますが
しばらくのあいだ残高照会を続けてください」と
事務的な口調で宙に浮く私に引力を与えます。
それでもヘラヘラ顔だけはどうにも止まらず、
さぞかし周りの人は怖かったでしょう。

ということで後日
確かに56,000円は返却されたのです!
サカイ様、この場を借りて感謝申し上げます。
ありがとうございます。
銀行のオネエちゃんもご苦労様でした。
本当に助かった。

そして約束通りのお礼を
振り込ませていただきます。
もちろん“組戻し”は無しで。





syoseki_baner
irasuto
senba_baner