七色のスマホ

新規の取引で、初めて先方の会社を訪れます。
約束したAさんが、まだ外出先から戻って来ないということで、
同じ課の女性が自分のスマホをポケットから出し、連絡をとってくれました。
Aさんと繋がると彼女は
「Aが変わってほしいそうです」と、スマホを私に差し出します。
受け取って話しを終えると、Aさんはもう一度女性に変わってくださいと言うので、
繋がったまま彼女に戻しました。
その時、一瞬形相を変えた彼女が気になりましたが、
背を向けて話す姿を、私は黙って見ておりました。

気づくと、彼女はスマホを耳から不自然に少し離し、
直接肌に触れないようにスマホを持っています・・・
「ああっ!」
私は察しました。
「オレの顔の油!」

そうです。
私の顔の油で、スマホは素揚げしたてのナスのようになり、
彼女はきっと受け取るのもいやだったはずです。
私の顔面油は濃厚で、拭けば拭くほど広がってコーティングされ、
そのツヤは半永久的に消えることはありません。
かわいそうな彼女、きっと機種変も考えているでしょうし。
そして私に“油田ジジィ”とか、あだ名もすでにつけてるでしょう。

全国の“油田ジジィ”。
人のスマホを使う時は
けっして肌に触れることなく、
注意して使用しなければなりません。 








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